市販のだしパックは、本当によくできていると思います。袋を入れて煮出すだけ。洗い物もほぼなし。忙しい日の夕飯に「まあこれで」と手に取るのは、全然悪いことじゃない気がしています。
でも最近、「昆布と鰹節で出汁を取ると、味の次元が変わる」という話をよく見かけるようになりました。気になります。
自分がだしパックを手放せていない一番の理由は、「鍋に張り付いていないといけない気がする」「失敗したら料理全体が台無しになる気がする」という漠然とした怖さだった気がします。ちゃんと取り組んだことがないから、イメージだけが膨らんでしまっているのかもしれません。
この記事は、合わせ出汁に挑戦する前に「実際どういう工程なのか」を、協会や公的機関の公開情報を当たりながら整理しておくための作業メモです。まだ自分では取っていないので、書けるのは「調べた範囲での手順と根拠」までです。
「合わせ出汁が難しそう」は、どこから来るんでしょう
料理本やレシピサイトを眺めていると、出汁の取り方にはかなり細かい説明が書かれていることが多いです。「火加減に気をつけてゆっくり加熱」「鰹節は火を止めてから1〜2分」「絞ってはいけない」――。
読んでいるうちに「温度管理が必要なの?」「タイミングを外したら雑味が出るの?」と身構えてしまうのは、わりと自然な反応だと思います。
ただ、調べてみると、少なくとも昆布については温度計がなくても判断できる目安が示されていました。一般社団法人日本昆布協会は、昆布を引き上げるタイミングを「鍋の底から小さな泡がフツフツしてきたくらいの沸騰直前」と説明しています。温度ではなく見た目で判断できる、ということのようです。
さらに、加熱をまったく使わない方法もあります。同協会は「昆布水」として、水に昆布を漬けておくだけの取り方も紹介しています。

まず「水出し昆布」だけ、から始められそうです
基本的な構成として整理すると、合わせ出汁は大きく2段階に分けられます。
- 第1段階:昆布だし — 昆布を水に漬けて、うま味を移す。加熱する方法と、加熱しない方法がある。
- 第2段階:鰹節を加える — 昆布だしを温め、火を止めてから鰹節を入れて少し待ち、こす。
この構成を知ったとき、「あ、前日の夜に昆布を水に入れておくだけでいい日があるのか」と感じました。難しそうに見えた工程が、「前日にほとんど手を動かさない仕込み」と「翌日の短い加熱」に分解できそうです。
ちょっと欲張りかもしれませんが、これなら週に1〜2回試せそうな気がしています。
昆布だしの目安(日本昆布協会の公開情報より)
「正解」は使う昆布の種類や好みによって変わるので、あくまで出発点として:
加熱して取る場合(日本昆布協会「昆布だしの取り方」)
- だし昆布10〜20g程度に対して、水1リットル
- 分量の水に昆布を30分くらい漬ける
- 中火にかけ、鍋底から小さな泡がフツフツしてきた沸騰直前に昆布を取り出す
加熱せずに取る場合=昆布水(日本昆布協会「昆布水」)
- だし昆布20g程度に対して、水1.5リットル
- 昆布は2〜5cm角にカットするか、3〜5mmに細切りにする(そのままでもよい)
- 3時間以上、できれば一晩漬ける
- 冷蔵庫で1週間くらいはもつが、夏場は早めに使い切る
同協会は、昆布の表面の白い粉について「マンニットという、うま味成分」であり、ごしごし水洗いするとうま味成分まで流れ出してしまうと説明しています。扱いは「固くしぼったふきんなどでさっと拭く(水洗いはしない)」とのこと。これは知らないと洗ってしまいそうなので、先に書いておきます。
なお「30分」と「一晩」はどちらも協会の資料に出てきますが、加熱する場合と昆布水の場合で前提が違います。同じ土俵で比べた資料は見つけられませんでした。どちらが自分の好みに合うかは、並べて取ってみないと判断できないところです。
鰹節を加えるステップ、ここが少し怖いかもしれません
昆布だしを鍋で温め、鰹節を加えてこす、という工程自体はシンプルです。でも「どのタイミングで入れるのか」が自分の中でまだフワッとしていました。
鰹節専門メーカーの公開レシピを見ると、順序がはっきり書かれていました。ヤマキ「合わせだしの取り方」は、沸騰直前に昆布を引き上げ、沸騰後に火を止めてからかつお節を入れ、かつお節が鍋底に沈むまで1〜2分おき、ふきん等を敷いたザルで静かにこす、という手順を示しています。分量はだし昆布約10g、花かつお約20g、水1リットル。
こすときの注意も明記されています。にんべん「本物のだしの取り方」は一番だしについて「えぐみが出てしまうので、鍋に鰹節を入れる時はかき混ぜず、こす時は鰹節を絞らないでください」としています。「絞らない」理由は、雑味ではなくえぐみでした。ここ、自分は取り違えて覚えていました。
昆布の加熱についても同ページは「鍋底から小さな気泡が出てきたら火を止め(約80℃)」「昆布を煮出すときに沸騰させてしまうと、だしの風味が落ちる」と説明しています。「沸騰させると風味が落ちる」であって、「えぐみが出る」とは書かれていません。
加熱の工程は正直、やってみるまでどのくらい気を使うべきかわかりません。でも「火を止めてから鰹節を入れて、あとは待つだけ」と順序が固定されているぶん、思っていたより判断する場面は少なそうです。
昆布だけ・鰹節だけ、でも成立します
合わせ出汁を前提にしましたが、それぞれ単独でも出汁になります。
- 昆布だし単体 — 上の「昆布だしの目安」で取ったものをそのまま使う。加熱なしの昆布水でも取れる。
- かつおだし単体 — 昆布を使わず、水を沸騰させて火を止め、鰹節を入れ、沈むまで待ってこす。
いきなり合わせなくても、片方だけで試して様子を見る、という入り方もありそうです。
「合わせる」と何が起きるのか
昆布と鰹節を合わせる理由は、うま味の相乗効果として説明されています。
農林水産省「和食ワールドチャレンジ」は「昆布に含まれるグルタミン酸と鰹節に含まれるイノシン酸の二つが合わさる事で、相乗効果となり、だしのうま味を引き立たせます」と説明しています。
効果の大きさについては、NPO法人うま味インフォメーションセンターが「MSGとIMPの間の相乗作用はきわめて大きいのです。両者を混ぜると7-8倍うま味が強くなるのです」と記しています。MSGがグルタミン酸塩、IMPがイノシン酸塩です。
「2種類使うと2倍」ではないらしい、というのが意外でした。数字の受け止め方には注意が必要だと思いますが、少なくとも「なんとなく良さそう」以上の理由はありそうです。
昆布の種類も、気にしておくとよさそうです
昆布には真昆布、羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布などの種類があり、日本昆布協会「昆布の種類」は次のように説明しています。
- 真昆布 — 上品な甘味をもち、清澄なだしがとれる。主にだし昆布として利用、佃煮、塩昆布など
- 羅臼昆布 — 黄色味を帯びた濃厚でこくのある高級だしがとれる。主にだし昆布として利用、おやつ昆布、佃煮など
- 利尻昆布 — 透明で風味の良い高級だしがとれ、会席料理などに使われる。主にだし昆布として利用、塩昆布、湯豆腐など
- 日高昆布 — 柔らかく煮えやすい。だしにも使われる。佃煮昆布、昆布巻、おでん用、だし昆布など
価格については協会の資料で確認できなかったので、ここでは触れないでおきます。
風味の違いは、これも「実際に使い比べないとわからない」部分が大きいと思っています。まずは近所のスーパーで手に入りやすいものから始めるのが現実的かもしれません。
最初から種類にこだわりすぎると、また「難しそう」という気持ちが戻ってきそうなので。
だしがらは、もう一度使えるようです
昆布と鰹節を買うと、取ったあとの「だしがら」が残ります。捨てるものだと思っていたのですが、にんべんの同じページでは二番だしという使い方が紹介されていて、二番だしをこす際には「軽く絞る」ことが許容されています。一番だしで絞らないのは、あくまで一番だしの話だったようです。
一番だしと二番だしで扱いが変わる、という発想は自分になかったので、これは覚えておきたいところです。
試すとしたら、こんな順番で考えています
整理してみると、自分が最初に試すとしたらこの順番がよさそうかなと思っています。
- 昆布の表面を固くしぼったふきんで拭き、水に漬ける(洗わない)
- 加熱する日は30分ほど漬けてから中火に。小さな泡が出てきたら昆布を引き上げる
- 沸騰後に火を止めて鰹節を入れ、沈むまで1〜2分待ってこす。かき混ぜない、絞らない
- 出汁を使って味噌汁か、シンプルなお吸い物を作る
- 余裕があれば、だしがらで二番だしも取ってみる
ただ、実際にやってみたら「思ったより昆布が高かった」とか「保存方法に悩む」とか、違う壁が出てくる気もしています。そのあたりは別途書いていけたらと思います。
「面倒くさい」という印象の多くは、やったことがないから輪郭が見えていないだけ、という可能性もある気がしています。少なくとも今回、温度ではなく見た目で判断する目安があること、鰹節は火を止めてから入れること、絞らない理由がえぐみであることが分かって、「なんとかなりそう」という感触は少し持てました。
自分でも忘れがちですが、最初から完璧に作る必要はないはずなので。
参照した資料
- 一般社団法人日本昆布協会「昆布だしの取り方〜基本の昆布だし」
- 一般社団法人日本昆布協会「「昆布水」で昆布だしの取り方」
- 一般社団法人日本昆布協会「昆布の種類(昆布いろいろ)」
- 農林水産省「和食ワールドチャレンジ 3.だし・うま味について」
- 特定非営利活動法人うま味インフォメーションセンター「核酸系うま味物質と相乗作用の発見」
- 株式会社にんべん「本物のだしの取り方とレシピ」
- ヤマキ株式会社「合わせだしの取り方」
Cover photo by Gu Ko on Pexels
In-body photo by Bruno Makori on Pexels

